図書館ごくらく日記

図書館に関するいくつかのトピックス

遊びの場としての図書館

 公立図書館は、さまざまな催し(行事・イベント)を通じて住民を図書館に惹きつけようと努めています。催しの中には講演会や講座、相談会など、遊びや趣味の要素の少ないものもありますけれど、最近の催しの傾向としては、種類が増えている、遊びや楽しみの要素が色濃くなっている、と言えます。

 つまり、最近の公立図書館には、遊びの場、趣味の場、読書以外でも楽しめる場、いくつかの催しを組み合わせた祭りの場、となっている例が少なからずあるということです。ただし、図書館の催しは、展示などを除けば毎日行われているわけではなく、定番の子ども向けおはなし会などでも、週に1日がふつうです。

以下、いくつかのパターンに分けて、実例を挙げながらご紹介します。なお、以下の引用は各図書館のウェブサイトからで、時期は201901~02です。

 

見て楽しむ

◎マジック(手品)

 演じてみせるだけのばあいと、簡単なものを教えるばあいとがあります。

バルーンアート(風船を使う造形)

 マジックと同じく、見せるだけのばあいと、教えるばあいとがあります。

鉄道模型

 和泉市立シティプラザ図書館(大阪府)では、毎週日曜日の午前と午後の1回、各10 分間、「ジオラマ・トーマスが動きます。」

 

聴いて楽しむ

◎落語(寄席)

「新春」「恒例の」「真夏の」などという枕詞つきの落語会が各地の図書館で開かれています。なぜか、漫才はほとんどありません。

◎演奏会・コンサート

ミュージシャンやアーティストが生出演するものです。池田町図書館(岐阜県)ではカントリー・ミュージックやジャズのコンサートを開いてきました。

◎おはなし会

図書館のイベントの中で最もポピュラーな定番です。多くは乳幼児がターゲットですけれど、最近は「大人のための」とか「外国語の」などという枕詞つきのおはなし会が現れています。おはなし会はストーリーテリングとも言われていまして、話し手が物語を暗記しておいて語り聞かせるものです。

◎読み聞かせ

絵本や短いおはなしを読み聞かせます。朗読会も似たようなものですが、こちらはどちらかと言えば聞き手の年齢層が高くなります。中には「大人のための」と銘打った朗読会もあります。

ほかに、数は多くありませんけれど、講談、対談、昔話(民話)などを聞かせるプログラムもあります。クリスマス会ではハンドベルの演奏を聴ける図書館もあります。

 

視聴して楽しむ

◎紙芝居

図書館の児童サービスの定番のひとつです。紙芝居は日本独特のもので、かつては紙芝居屋さんが街を回っていました。

◎映画会

YouTubeなどの動画が気軽に見られるようになっても、相変わらず公立図書館でつづいている人気プログラムのひとつです。

◎パネルシアターやエプロンシアター

パネルシアターは、大きなパネルに人や物、動物などを貼りつけながら話を進めるものです。エプロンシアターは、パネルの代りに、演じる人が着けたエプロンに人や物、動物などを貼りつけながら話を進めるものです。いずれも節をつけたり歌を取り入れたりします。

◎人形劇

 立体的な人形が活躍する劇です。操り人形、指人形などがありますが、パネルシアターやエプロンシアターと比べると手間がかかります。それでも、旭川市図書館(北海道)、東京都の多くの区立図書館、大阪市立図書館、三木市立図書館(兵庫県)などで公演が行われています。

◎腹話術

 最近は、仙台市図書館(宮城県)や宮崎市立図書館で公演が行われました。

 

歌って楽しむ

 幼児が歌いながら手遊びをする催しは、各地の公立図書館で行われています。「むすんでひらいて」は誰でも知っていますよね。

変わった催しとしては次のような例があります。

 2017年12月、田原(たはら)市立図書館(愛知県)は、中央図書館15周年記念イベントで、「うたう図書館」というワークショップを催しました。これは、「音楽家野村誠さんと一緒にオリジナルの歌を作ります。中央図書館の中で、普段は出せない大きな声で歌ったり、自由に意見を出し合ったりして、みんなで楽しく遊びながら歌作り。作った歌は、12月23日(土)の「うたう図書館フェス!」で発表!」というものでした。

 

描いて楽しむ

 多くは教室という形をとっています。描くのは、まんが、イラスト、ぬり絵、絵本などです。

 珍しい例としては、2015年6月、札幌市中央図書館が開催した「タブレットPCでオリジナル絵本をつくろう!」というイベントがあります。対象は5歳から8歳くらいまでの子どもとその保護者です。絵を描き、録音(吹き込み)とプリント、製本までを自分たちで仕上げて、持ち帰ることができたそうです。

 その後、デジタル絵本づくりの催しは今年(2019年)まで札幌市のえほん図書館でつづけられています。

 

作って楽しむ

 公立図書館で何かを作る催しは、多種多様です。多くは工作教室とか科学教室(科学遊び)という形をとっていますけれども、イベントのひとつに組み込まれているばあいも少なくありません。よく作られているのは、次のようなものです。

◎本に関するもの

 絵本(紙・布・デジタル)、紙芝居用の舞台、しおり、製本、図書館バッグ、ブックカバー、豆本など。

◎おもちゃ

 折り紙、紙飛行機、かるた、切り絵、こま、人形、布の遊具、万華鏡など。

◎その他

 アクセサリー、(壁やツリーの)飾り、カレンダー、ケーキ、写真立て(フォトフレーム)、チョコレート、ラジオなど。

 とても珍しい物づくりとしては、三島市立図書館(静岡県)の紙堆朱(かみついしゅ)づくりがあります。紙堆朱というのは、色つきの画用紙を重ねて貼り合わせ、それを彫刻刀などで彫ってかわいらしい小物にするものです。2017年10月に催され、小学校の高学年生が対象でした。

 

組み立てて楽しむ

 積み木とレゴが、組み立てて楽しむありふれた遊びです。

 都農(つの)町民図書館(宮崎県)には「からからつみきコーナー」があります。ここでは宮崎の杉の木の「からからつみき」を使って、0歳から大人まで、また一人でも多人数でも楽しめるということです。「からからつみき」とは宮崎産の杉の細長い板状の積み木。

 

からだを動かして楽しむ

 手遊びや指遊び、リズム遊び(リトミック)は、幼い子どもを対象として、図書館でもよく行われてきたものです。

 あやとり、けん玉、玉入れ、羽根つき、福笑い、ヨーヨー、輪投げなどの昔懐かしい遊びが、図書館まつりやお正月のイベントなどで行われています。

ダンスは最近になって登場してきた図書館での遊び・楽しみです。たとえば、

大阪府立中央図書館は、2007年2月に第1回の「若者ダンス・カーニバル」を開催し、今年(2019年)までつづけています。出場チームは年度によって異なりますが、2019年度は49チームの予定となっています。午前・午後の審査時間中に「図書館紹介タイム」を設けて図書館のPRをしています。といいますのは、当初からの目的が、10代の若者にもっと図書館に来てもらうことだからです。

名護市立中央図書館(沖縄県)は2019年1月、「ハワイ出身のサラ先生と英語でしゃべりながらハワイアンフラを踊」る「ハワイアン・フラ」という、だれでも参加できる催しを開いています。

遊びや楽しみとは逸れますけれど、健康維持・病気予防を目的としたストレッチや体操をする催しがあちこちの公立図書館で開かれています。大和市立図書館(神奈川県)の「首と肩こり予防のお話と体操」、練馬区立図書館(東京都)の「お口すっきり体操講習会(ストレッチ)」、福岡市東図書館の「認知症予防~コグニサイズを体験してみよう~」などがその例です。

 

競って楽しむ

◎将棋・囲碁・オセロ

 和室やたたみコーナーのある公立図書館に将棋や囲碁のセットが鎮座している景色は、かなり以前から見ることができました。豊岡市立図書館本館(兵庫県)では囲碁3セット、将棋4セット、オセロ2セットを用意していて、「いこいの間」と「いこいの庭」で利用することができます。

ボードゲーム

最近では、各種のボードゲームが図書館に登場しています。たとえば、

大津町立おおづ図書館(熊本県)は2018年4月から18種類のボードゲームを用意していて、13種類は館外貸出可能、5種類は館内利用としています。対象年齢は、3歳以上から大人まで。

◎伝統的な遊び

 かるた、百人一首、すごろくなどが、公立図書館のイベントで行われています。かるたは、郷土かるた(ふるさとかるた)が伝わっている地方もあって、この3種の中ではいちばん人気があるように思われます。

◎その他

 クイズ、コンクール、ビブリオバトル、ビンゴ、チェスなどのうち、前の3種は図書館でときどき見かけます。後の2種のうち、チェスは(欧米の公共図書館では古くから親しまれてきましたけれど)日本の公立図書館で見かけないと言っても過言ではないでしょう。

 

非日常の体験を楽しむ

図書館を知ってもらうための企画には、図書館見学(探検)・図書館の仕事体験、1日図書館員などがあります。

体験型のイベントとしては、次のようなものがあります。

生け花、お化け屋敷、音読(教室)、蚕とのふれあい(糸取り)、影絵、ぬいぐるみお泊り会、フェイスペインティング、変身体験(物語などの登場人物の衣裳を着て写真撮影)など。

 

あれもこれも楽しむ

例1:大河原町駅前図書館(宮城県)は、2019年1月に「お正月の遊びとお話の会」を開催しました。遊びは、「ゴム鉄砲・おはじき・あや取り・カルタとり・羽子板・お手玉・ふくわらい・コマなどで、昔なつかしい遊びを体験してみませんか?」というものです。

 

例2:豊川市中央図書館(愛知県)の図書館まつり

 豊川市中央図書館(愛知県)では、2016年から春と秋の2回、図書館まつりを開催しています。2018年は6月と10月に各2日間(土曜・日曜)行われました。そのウェブサイトに掲載された写真から遊びの要素のある(または強い)ものをご紹介しますと、

 将棋会、生け花体験、英語で遊ぼう、エントランスイベント、本の修理見学会、落語、電子書籍体験会、読み聞かせ、工作体験ハロウィン、親子映画会、フェイスペインティングなど、盛りだくさんでした。

 また、同館の「図書館コラボイベント」(2018年度)は、図書館と市の他の部署とが協力して開催した多様なイベントです。ただし、こちらはターゲットが大人だけで、遊びや楽しみの要素が全く見当たりません。でも、試みとしてはとても面白いと思いましたので、ご紹介します。

図書館以外の部署とそのイベントは、財産管理課=ファシリティマネジメント講演会、商工観光課=創業ミニセミナー、子育て支援課=読み聞かせボランティアフォローアップ講座、カウンセリング室=「幼少期からの親子の対話の大切さ」講座、でした。ほかに愛知学泉短期大学=食育教育も加わっていました。

 

例3:ぶっくりモール in 飯塚 2018

 これは、飯塚市立図書館(福岡県)と同市の二つの商店街がコラボした「本のおまつり」で、2018年は3回目でした。開催は11月中旬の金曜から日曜までの3日間、会場は図書館とふたつの商店街。商店街との協力という点が珍しいですね。

 図書館会場での催しは地味なものがほとんどでしたけれど、商店街会場では「大人のぬり絵教室」「おはなしかい」「おもちゃすくい」「リサイクル市」「わくわく工作」など、ちょっと様子をのぞいてみたくなるような企画が並んでいました。