設立の基本的な理念に「社会貢献」や「社会奉仕」を掲げる団体は、日本にもたくさんあります。その多くは国際的な団体で、その末端の構成単位はそれぞれ独自の社会貢献活動を展開しています。ここでは、構成単位が比較的長期間にわたって図書館に本を寄贈している例を取り上げます。本の購入資金を寄付しているばあいは、とりあげていません。
(1)ライオンズクラブ
1917年にアメリカで創設されたライオンズクラブは、現在、200以上の国と地域で約46,000のクラブ(構成単位)の約140万人がさまざまな分野で活動している世界最大の奉仕団体です。日本には2,950のクラブがあり、会員数は11万人余りです(2020年1月末のデータ)。
クラブ名にあるライオンズは、猛獣のライオンを意味するのではなく、発足当初に掲げたスローガンであるLiberty, Intelligence, Our Nation’s Safetyの頭文字をつなげたものです。いくつか例を挙げますと、
⦿会津若松葵ライオンズクラブ(福島県) ⇒ 会津若松市立会津図書館
1970年度から50年間にわたって本を寄贈。
1972年から48年間にわたって本を寄贈し、累計約2,800冊。
1976年度から35年間にわたって児童図書を寄贈。
⦿森ライオンズクラブ(北海道) ⇒ 森町図書館
1983年から37年間にわたって大型絵本などを寄贈し、累計約700冊。
(2)ロータリークラブ
1905年にアメリカで創設されたロータリークラブは、2017年現在、200以上の国と地域にある約36,000のクラブと120万人の会員がさまざまな分野で活動している団体で、その目的のひとつに社会奉仕をかかげています。日本には、2016年8月末現在で、2,274クラブに89,302人の会員がいます。(『ロータリーの友』のウェブサイト)
この団体にはいくつかの特徴があります。①ひとつのクラブの会員は1業種から1名しか選ばれないこと、②毎週ひらかれる定例会に原則として必ず出席しなければならないこと、③年会費が高めなこと、などです。
1961年度からほぼ60年間にわたって大活字本を寄贈。
1982年から38年間にわたって本を寄贈。図書館にロータリー文庫のコーナーあり。
1989年から30年間にわたって本を寄贈。
(3)国際ソロプチミスト
1921年にアメリカで初めて結成されたソロプチミストクラブは、現在、「4つの連盟(アメリカ連盟、ヨーロッパ連盟、グレートブリテン&アイルランド連盟、サウスウェストパシフィック連盟)で構成され、約130ヶ国に3,000のクラブ、80,000人の会員を有する、女性の世界的な奉仕団体」となっています。
「ソロプチミストという語は、”soror ソロ(姉妹)”と”optimaオプティマ(最良)”という2つのラテン語から作られたもので、「女性にとって最良のもの」という意味」だそうです。(同団体の「アメリカ日本中央リジョン」のウェブサイト、20200303)
日本には5つのリジョンに495のクラブがあり、10,800人余りの会員がいます(20180430現在)。
1979年から40年間にわたって本を寄贈。累計で15,000冊以上。
1979年度から40年間にわたって児童図書を寄贈。累計3,000冊以上。
1990年度から30年間にわたって外国語の絵本を寄贈。累計1,000点以上。図書館には「国際ソロプチミスト堺文庫」のコーナーあり。
2003年から16年間にわたって外国語の本を寄贈。
1990年から30年間にわたって児童書を寄贈し、累計約2,000冊。図書館の児童図書室には「国際ソロプチミスト寄贈図書コーナー」あり。
(4)ゾンタクラブ
1919年にアメリカで最初につくられたゾンタクラブは、徐々にアメリカ以外の国にも拡がってゆき、1930年の世界大会で正式に「国際ゾンタ」(Zonta International)という連盟になりました。Zontaという語は、アメリカのスー族が話していた言葉にあるもので、「正直で信頼できる」という意味だということです。
このクラブは、長いあいだ専門職・管理職にある女性だけのクラブでしたけれど、最近では男性も会員になれるようになりました。
名古屋SORAゾンタクラブのウェブサイトによりますと、「現在、68ケ国に1,200以上のクラブ{があって}33,000名の会員がいます。会員の職業は100余種に分類され、クラブ入会は一業種数名を原則とし、国際ロータリーに匹敵するもの」だそうです。現在、日本では46のクラブに約1,000人の会員が活動しています。
1999年から20年間にわたって大活字本を寄贈。累計は1,365冊。
1997年度から20年以上、ほぼ毎年、児童図書を寄贈。
(5)図書館友の会
図書館友の会や図書館サポーターズにも、公立図書館に本を寄贈している例があります。たとえば、
⦿芦別市立図書館(北海道)の図書館友の会ピーターパンは1996年に発足し、現在の会員が7名と小粒ながら、「毎年主催の古本市では売上げで児童書を購入し、今までに946冊寄贈して」います。(同館の『図書館ニュース』2018.3)
⦿1998年に発足した小平図書館友の会(東京都)は、年1回開催のチャリティ古本市で、市民から寄付された本を販売し、純益金で買った新刊本を小平市立図書館に寄贈しています。2019年のばあい、「古本を寄付してくださった方350人以上、寄付本の数24,400冊、来場者数1,440人、売上冊数9,600冊、売上金329,000円、小平市立図書館への寄贈本252冊」だということです(同会のブログ、20200207)。年に1回の催しとはいえ、なかなか盛大ですね。
⦿根室市図書館(北海道)の古本市実行委員会・図書館ボランティアは、2019年6月、第47回古本市で市民から提供された14,190冊の本を3,587冊販売、その収益金310,900円によって児童書を購入、古本市実行委員会が図書館に寄贈することになりました。(同館の『図書館ニュース』2019.6)
同館の2013年から2018年の『図書館ニュース』6・7月号にはいつも古本市がトップニュースになっていて、市民から提供された本の冊数、売れた本の冊数、収益金額などが、2019年の実績を上回っています。ニュースの見出しどおり、毎年「大盛況」のようです。
また、2019年度に同館へ寄せられた10件以上の本の寄贈者には、匿名で45年間にわたって寄贈をつづけている「ミセス・クロース」さんと、同じく匿名で20年間にわたって寄贈をつづけている「夢さん」が含まれています。
(6)法人会
日本には、中小企業や個人経営者でつくる法人会という地域団体(公益社団法人・一般社団法人)があります。その全国組織である全国法人会総連合の会員企業は約80万社、構成単位である各地の法人会は440にのぼっています。
この団体の活動は税制にかんするものが中心ではありますけれど、「地域社会への貢献」も含まれていて、災害復興支援、献血、清掃などとともに図書館への本の寄贈が行われています。たとえば、
⦿青森法人会(青森県)は2000年から青森市民図書館に継続して本や紙芝居を寄贈しています。2019年までの累計で本が523冊、紙芝居が739巻に達したそうです。
⦿佐世保法人会(長崎県)は2002年度から「毎年、佐世保市と川棚町、波佐見町、東彼杵町、小値賀町の1市4町の中学校に図書の寄贈を続けており、10年間の寄贈合計は図書5492冊(877万円相当)と書架31セット(85万円相当)」になったということです。
⦿益田法人会(島根県)は2010年に益田市立図書館へ児童図書を寄贈し始め、2017年には累計596冊になりました。図書館には「益田法人会文庫」 コーナーが設けられています。