図書館ごくらく日記

図書館に関するいくつかのトピックス

あの人も図書館員だった

ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(Leibniz, Gottfried Wilhelm, 1646-1716)

ライプニッツは、17世紀の後半から18世紀の初めにかけて、哲学と数学の分野で歴史にのこる業績をあげた人です。それだけでなく、彼は、とりたててくれた領主の命による仕事でも、みずから関心をよせて努力した仕事でも、活動の幅がとても広い人でした。その…

ジョン・エドガー・フーヴァー(Hoover, John Edgar, 1895-1972)

ジョン・エドガー・フーヴァーは、アメリカ合衆国のFBI(Federal Bureau of Investigation=連邦捜査局)の初代長官だった人です。FBIやその捜査官については、映画や小説などでよく取り上げられてきましたので、ご存知の方が多いのではないかと思います。 F…

阿倍仲麻呂(あべ・の・なかまろ 698?-770)

2004年4月に中国の西安市(かつての長安)でひとりの日本人の墓誌が発見され、それが「公、姓は井、字は真成、国は日本と号す」で始まるため、埋葬されたのが井真成(せい・しんせい)という遣唐留学生ではないかということで、日中の関係者の関心を集めまし…

白居易(はく・きょい 772-846)と唐代の文人たち

白居易は中唐の詩人で、字は楽天です。詩仙と称された李白が亡くなって10年後、詩聖と称された杜甫が亡くなって2年後の772年、鄭州(ていしゅう)新鄭県(今の河南省新鄭市)の小さな町で生まれました。祖父も父も科挙に合格しましたけれど、中央の官僚への…

イマヌエル・カント(Kant, Immanuel, 1724-1804)

イマヌエル・カントは18世紀の哲学者で、その生地はプロイセン王国のケーニヒスベルク。この都市にはバルト海に面する港があり、人口は5万数千人、ドイツ人以外にもいろいろな民族が定住していました。 父が馬具職人、母が馬具職人の娘で、両親はイマヌエル…

フィリップ・アーサー・ラーキン(Larkin, Philip Arthur, 1922-1985)

フィリップ・ラーキンは、1950年代から60年代にかけて発表した詩集によって高く評価されたイギリスの詩人です。 彼は、オックスフォード大学を卒業直後に就職した小さな公共図書館を皮切りに、63歳で死去するまで、切れ目なく3つの大学図書館に勤めました。…

司馬遷(しば・せん BC145?-BC86?)

司馬遷は、『史記』という歴史書を書いた人として有名ですね。けれども、彼の生きた時代が2000年以上前ですから、その人物像については分からないことがたくさんあります。 司馬遷の伝記的なことがらについての唯一と言ってよい手がかりは、『史記』「列伝」…

ロラン・バルト(Barthes, Roland Gérard, 1915-1980)

20世紀後半に活躍した評論家・記号学者ロラン・バルトは、1915年にフランス北西部のシェルブールという港町で生まれました。当時32歳の海軍中尉だった父親のルイは、長男バルトがまだ1歳にならないうちに戦死してしまいます。22歳の母親アンリエットは、パリ…

フランツ・グリルパルツァー(Grillparzer, Franz, 1791-1872)

19世紀に活躍したオーストリアの劇作家フランツ・グリルパルツァーは、首都ウィーンで5人兄弟の長男として生まれました。弁護士だった父親は内向的な性格で、あまり人付き合いをせず、音楽が大好きだった母親は、幼いフランツにピアノ演奏の手ほどきをしまし…

高橋景保(たかはし・かげやす 1785-1829)(書物奉行:その3)

江戸幕府で天文方(てんもんかた)という役職をつとめた高橋景保は、1785年(天明5年)、大坂で生まれました。下級武士だった父の高橋至時(よしとき)は、長男の景保が誕生した2年後に、優れた天文学者だった麻田剛立(あさだ・ごうりゅう)に入門し、その6…

アンドレ・アリス・ノートン(Norton, Andre Alice, 1912-2005)

アンドレ・ノートンは1912年生れのアメリカのSF作家、ファンタジー作家です。アンドレという名前はふつう男性名ですけれど、この作家は女性です。と言いますのは、生まれたときの名前アリス・メアリー・ノートンを、22歳のとき(1934年)に法的にアンドレ・…

田中克己(たなか・かつみ 1911-1992)

日本が太平洋戦争に敗れた翌年の7月、ひとりの詩人が奈良県の天理図書館に赴任しました。詩人とは、その年の2月に戦地から帰還した田中克己です。 彼は1932年に創刊された詩誌『コギト』の創刊同人のひとりとして詩を発表する一方、第2次『四季』などにも加…

ルイス・キャロル(Carroll, Lewis, 1832-1898)

『不思議の国のアリス』によって知られている作家ルイス・キャロルは、1832年にイングランドのダーズベリーという緑ゆたかな村で、牧師の長男として生まれました。のちにルイス・キャロルという筆名を使うこのチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンには、ふた…

ローベルト・ムージル(Musil, Robert, 1880-1942)

オーストリアの作家ローベルト・ムージルは、20世紀の前半にいくつかの話題作を発表したオーストリアの作家です。その代表作である『特性のない男』は、ほぼ同時期に活躍したマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』やジェイムズ・ジョイスの『ユリシ…

森鷗外とふたりの親族(もり・おうがい 1862-1922)

ここでは、森鷗外と弟の潤三郎、長女茉莉(まり)の夫だった山田珠樹をご紹介します。 (1)森鷗外 森鷗外は、本名林太郎、父は津和野藩(現:島根県)の御典医だった静泰(明治維新後に静男と改名)、母は峰子というしっかり者の女性でした。林太郎が生まれ…

李大釗(り・たいしょう 1889‐1927)

李大釗は、中国共産党の創設を主導した思想家のひとりです。また、北京大学の図書館長や教授でもありました。 彼は1889年、河北省楽亭県の大黒沱(だいこくた)村の農家に生まれ、幼くして両親を亡くします。孤児を育てたのは、孫に教育を受けさせるだけの財…

ゴルダ・メイア(Meir, Golda, 1898-1978)

イスラエルの第5代首相ゴルダ・メイアは、ロシア帝国(帝政ロシア)の生れです。生地はウクライナのキエフ、生年は1898年、出自はユダヤ人でした。これらの条件が彼女の人生に大きな影響を与えます。 と言いますのは、ロシアではポグロムというユダヤ人への…

ローラ・ブッシュ(Bush, Laura Lane Welch, 1946‐)

第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・ブッシュ氏の夫人として知られるローラ・ブッシュ氏は、1946年、テキサス州のミッドランドという町で生まれました。両親は彼女のあとにも何人かの子どもを授かりましたけれど、どの子も生まれて間もなく亡くなったため…

毛沢東(もう・たくとう 1893‐1976)

中華人民共和国の創建にもっとも功績のあった毛沢東は、中国南部の湖南省湘潭(しょうたん)県の韶山(しょうざん)という村で、農家の3男として生まれました。ですが、兄ふたりが夭折したため、彼が実質的に長男でした。 理財に長けた父は、農地を買い増し…

グリム兄弟(Grimm, Jacob Ludwig Carl, 1785-1863)(Grim, Wilhelm Carl, 1786-1859)

グリム兄弟は、イソップやアンデルセンと並んで、世界中で親しまれてきた童話の作家として有名ですね。日本では、今世紀に入っても、ふたりの童話集や個別の童話が出版されつづけています。 1歳違いのヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟は、ドイツ中部のハ…

近藤重蔵(こんどう・じゅうぞう 1771-1829)(書物奉行:その2)

江戸時代後期の北方探検家として知られる近藤重蔵は、本名を守重(もりしげ)、号を正斎(せいさい)または昇天真人といい、重蔵というのは通称です。この人に言及するときによく使われているのは「重蔵」ですが、たまには「守重」を使っている例があり、190…

青木昆陽(あおき・こんよう 1698‐1769)(書物奉行:その1)

青木昆陽はサツマイモが日本全国に普及するきっかけを作った人として有名ですね。 ところが、『言海』という国語辞典を編纂した大槻文彦は、「青木昆陽先生に就て」という評伝の中で、彼には洋学(西洋の学問)の先駆者という、もうひとつ重要な貢献があると…

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Goethe, Johann Wolfgang von, 1749-1832)

ドイツの作家ゲーテは、詩、劇曲、小説、評論、紀行、従軍記、自叙伝など、文学の幅広い分野で一級品の著作を書きました。また、植物学、地質学、光学その他、自然科学をも幅広く研究し、論文を発表しています。 それら学術面の多岐にわたる活動の一方で、彼…

マルセル・プルースト(Proust, Marcel, 1871-1922)

20世紀のフランスで最高の小説家といわれるマルセル・プルーストは、1871年にパリ郊外のオートゥイユにて生まれました。父親は優れた医師で、医学アカデミーの会員、衛生局総監、パリ大学医学部教授などを歴任した人でした。 家族の愛情をうけて幸せな幼年時…

ピウス11世 (Pius XI, 1857-1939)

1984年9月のある日、モントリオールのシェルブルック通り上空で、3機のヘリコプターが轟音をひびかせていました。通りの歩道には、教皇(ローマ法王)ヨハネ・パウロ2世を歓迎する人があふれ、私はひとりの野次馬としてその光景をながめていました。 多く…

莫言(ばくげん 1955-)

1955年、中国の海沿いにある山東省高密県(いまは高密市)の農家に4人きょうだいの末っ子が生まれ、管謨業(かん・ぼぎょう)と名づけられました。のちにノーベル文学賞を受賞する莫言氏です。 後年、子ども時代を回想した氏は、いくつかの「飢え」について…

ホルヘ・ルイス・ボルヘス(Borges, Jorge Luis, 1899-1986)

ボルヘスはアルゼンチンの作家、詩人で、日本では多くの小説、詩、評論が翻訳・出版されていますが、個人全集は出ていません。 ボルヘスは、子供のころから遺伝によって目に不自由を感じはじめ、1927年を最初として何度も白内障の手術を受けたかいもなく、19…

東海林太郎(しょうじ・たろう 1898-1972)

東海林太郎は秋田県出身の歌手で、流行歌手としては珍しく、いつも燕尾服を着て直立不動で歌いました。歌手としてのデビューが遅く、人気が定着したのは30代半ばの1934年に発売された「赤城の子守歌」と「国境の町」が大ヒットしてからです。 彼は勉強も運動…

河上肇(かわかみ・はじめ 1879-1946)

河上肇はマルクス経済学者で、山口県の岩国に生まれ、山口高等学校から東京帝国大学法科大学を卒業しました。卒業後、東京帝国大学農科大学講師、読売新聞社記者、京都帝国大学の講師から教授などを歴任し、その間にかずかずの著作を発表しました。 1928年に…

ルイ・エクトル・ベルリオーズ(Berlioz, Louis Hector, 1803-1869)

ベルリオーズは19世紀フランスの作曲家で、代表的な曲は、『幻想交響曲』、『ローマの謝肉祭』、『トロイアの人々』などです。 医者の息子だったベルリオーズは、父の勧めに従ってパリで医学の勉強を始めますが、どうしても医学に興味をもてません。そんなあ…