図書館界に限っての話ではありますけれど、前川恒雄さんは多彩な職歴の持ち主でした。すなわち、 ①市立図書館2館の館員、②日本図書館協会の事務局職員、③市の教育委員会職員、④市立図書館長、⑤市の助役と部長、⑥県立図書館長、⑦私立大学の教授、⑧私立大学図…
まだ10代の後半だった前川恒雄さんは、家族5人で暮らす金沢の狭いわが家をときどき訪れていました。恒雄さんが第四高等学校(略して四高=しこう)の理科甲類、金沢大学工学部の学生だったころで、ちょうど10歳年下の私は小学生でした。恒雄さんは私の父母の…
2020年4月10日に前川恒雄さんが亡くなって数日後、新聞にその訃報が載りました。すぐさま金沢に住む私の姉が電話をかけてきて、「あんなに偉い人だとは知らなかったわ。あんたもショックやろ」ということでした。姉が「あんなに偉い人」と言いましたのは、彼…
この調査について 目的 現在、日本の公立図書館で、どのような資料がよく借りられているかを具体的に調べること。 調査対象 全国95自治体の図書館。 その地区別の内訳は、北海道・東北=14、関東=19、中部=18、近畿=11、中国・四国=19、九州・沖縄=14。…
設立の基本的な理念に「社会貢献」や「社会奉仕」を掲げる団体は、日本にもたくさんあります。その多くは国際的な団体で、その末端の構成単位はそれぞれ独自の社会貢献活動を展開しています。ここでは、構成単位が比較的長期間にわたって図書館に本を寄贈し…
個人がまとまった蔵書を図書館に寄贈した例は、無数と言ってよいほどにあります。寄贈者の多くは作家や学者ですけれど、ほかにも実業家、政治家、軍人、官僚、宗教関係者、在野の研究者・専門家、(古)書店主、愛書家、旧家の当主、コレクター(地図・写真…
図書館は本の寄贈を受けるだけでなく、さまざまな機会に他の図書館へ本の寄贈をしてきました。 その中で、最近まで多かったのは、図書館が自館の刊行物(年報、要覧、報告書、紀要、蔵書目録など)を他館へ寄贈するというパターンでした。けれども、それらの…
日本では、国際的な文化交流や海外の理解を促進する手立てのひとつとして、さまざまな機関・団体が外国の図書館や大学、研究機関などに本を寄贈しています。 国際交流基金のプレスリリース(20191008)によりますと、2018年度調査(暫定)で、日本語教育を実…
(1)福島県立図書館の「県民のくらし応援文庫」 福島県立図書館は、「県民のくらし応援文庫」と名づけた図書を寄贈してもらう制度を2016年度からつづけています。方法は次のとおりです。(同館のウェブサイト、20200115) テーマは、県民の地域づくりや暮ら…
2017年12月2日、『日本経済新聞』の「ベストセラーの裏側」という欄に、西野亮廣(あきひろ)氏の『革命のファンファーレ:現代のお金と広告』という本についての記事が掲載されました。西野氏が全国の公立図書館にその本を1冊ずつ寄贈し、図書館での貸出が…
フィリップ・ラーキンは、1950年代から60年代にかけて発表した詩集によって高く評価されたイギリスの詩人です。 彼は、オックスフォード大学を卒業直後に就職した小さな公共図書館を皮切りに、63歳で死去するまで、切れ目なく3つの大学図書館に勤めました。…
司馬遷は、『史記』という歴史書を書いた人として有名ですね。けれども、彼の生きた時代が2000年以上前ですから、その人物像については分からないことがたくさんあります。 司馬遷の伝記的なことがらについての唯一と言ってよい手がかりは、『史記』「列伝」…
20世紀後半に活躍した評論家・記号学者ロラン・バルトは、1915年にフランス北西部のシェルブールという港町で生まれました。当時32歳の海軍中尉だった父親のルイは、長男バルトがまだ1歳にならないうちに戦死してしまいます。22歳の母親アンリエットは、パリ…
19世紀に活躍したオーストリアの劇作家フランツ・グリルパルツァーは、首都ウィーンで5人兄弟の長男として生まれました。弁護士だった父親は内向的な性格で、あまり人付き合いをせず、音楽が大好きだった母親は、幼いフランツにピアノ演奏の手ほどきをしまし…
江戸幕府で天文方(てんもんかた)という役職をつとめた高橋景保は、1785年(天明5年)、大坂で生まれました。下級武士だった父の高橋至時(よしとき)は、長男の景保が誕生した2年後に、優れた天文学者だった麻田剛立(あさだ・ごうりゅう)に入門し、その6…
アンドレ・ノートンは1912年生れのアメリカのSF作家、ファンタジー作家です。アンドレという名前はふつう男性名ですけれど、この作家は女性です。と言いますのは、生まれたときの名前アリス・メアリー・ノートンを、22歳のとき(1934年)に法的にアンドレ・…
日本が太平洋戦争に敗れた翌年の7月、ひとりの詩人が奈良県の天理図書館に赴任しました。詩人とは、その年の2月に戦地から帰還した田中克己です。 彼は1932年に創刊された詩誌『コギト』の創刊同人のひとりとして詩を発表する一方、第2次『四季』などにも加…
『不思議の国のアリス』によって知られている作家ルイス・キャロルは、1832年にイングランドのダーズベリーという緑ゆたかな村で、牧師の長男として生まれました。のちにルイス・キャロルという筆名を使うこのチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンには、ふた…
オーストリアの作家ローベルト・ムージルは、20世紀の前半にいくつかの話題作を発表したオーストリアの作家です。その代表作である『特性のない男』は、ほぼ同時期に活躍したマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』やジェイムズ・ジョイスの『ユリシ…
仕事や学業のために住いとは別の自治体に通う人にとって、職場や学校・大学の近くにある図書館を利用するほうが便利なばあいがあります。それについては、このブログの「広域利用」で書きました。 また、このブログの「図書館利用カード」では、国内の「複数…
公立図書館で、「図書館の利用に障害のある人」に対するサービスが広がっています。広がっているのは、サービスを実施している自治体、サービスの種類と対象者です。 その中で、かつて肉体的に何らかの障がいをもつ人たちに限っていた無料の宅配サービスは、…
ここでは、森鷗外と弟の潤三郎、長女茉莉(まり)の夫だった山田珠樹をご紹介します。 (1)森鷗外 森鷗外は、本名林太郎、父は津和野藩(現:島根県)の御典医だった静泰(明治維新後に静男と改名)、母は峰子というしっかり者の女性でした。林太郎が生まれ…
2015年、学校の夏休みが終わろうとするころ、鎌倉市図書館のツイッターに「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」「逃げ場所に図書館も思い出してね」という趣旨の文章が載り、大きな反響を呼びました。リツイートや返信…
李大釗は、中国共産党の創設を主導した思想家のひとりです。また、北京大学の図書館長や教授でもありました。 彼は1889年、河北省楽亭県の大黒沱(だいこくた)村の農家に生まれ、幼くして両親を亡くします。孤児を育てたのは、孫に教育を受けさせるだけの財…
公立や大学の図書館建設に際して多額の寄付をした人は、日本にもたくさんいます。ここでは、建設費の全額または大半を寄付した個人、グループ、企業、財団法人などの例をご紹介します。「多額」と確認できなかった例や、大学図書館については原則として省き…
前回は「自らが中心となって図書館を創った人たち」でした。今回は「多額の寄付によって図書館建設に貢献した人たち」です。このばあいもいろいろなケースがありますので、特徴的な例によって動機を考えてみたいと思います。 (2)多額の寄付によって図書館…
王侯や貴族、僧侶など特権階級の人ではなく、ふつうの人が図書館を創ろうとした動機は何だったんでしょうか。特徴的な例によって、それを考えてみたいと思います。 (1)自らが中心となって図書館を創った人たち 18世紀の後半に活躍したアメリカの政治家・科…
イスラエルの第5代首相ゴルダ・メイアは、ロシア帝国(帝政ロシア)の生れです。生地はウクライナのキエフ、生年は1898年、出自はユダヤ人でした。これらの条件が彼女の人生に大きな影響を与えます。 と言いますのは、ロシアではポグロムというユダヤ人への…
第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・ブッシュ氏の夫人として知られるローラ・ブッシュ氏は、1946年、テキサス州のミッドランドという町で生まれました。両親は彼女のあとにも何人かの子どもを授かりましたけれど、どの子も生まれて間もなく亡くなったため…
公立図書館は、さまざまな催し(行事・イベント)を通じて住民を図書館に惹きつけようと努めています。催しの中には講演会や講座、相談会など、遊びや趣味の要素の少ないものもありますけれど、最近の催しの傾向としては、種類が増えている、遊びや楽しみの…