図書館ごくらく日記

図書館に関するいくつかのトピックス

公立の子ども図書館

 公立図書館は、乳幼児から高齢者まですべての住民にサービスをするのが基本ですから、ほとんどすべての公立図書館は乳幼児と児童生徒にもサービスを提供しています。このブログの「乳幼児とその親に対するサービス」では、そのような図書館の授乳室、赤ちゃんタイム、託児サービス(保育サービス)などをご紹介しました。一方、ふつうの図書館と施設面で切り離された、公立の子ども図書館が少しずつ増えています。

 

 確認できたのは、約60の自治体(市区町村)が設置している子ども図書館ですが、その中から特徴のあるものをいくつかご紹介しようと思います。なお、子ども図書館の名称としては、こども図書館、児童図書館、えほん図書館、まんが図書館、キッズライブラリーなどが使われています。

 

子育て支援という視点

 多くの子ども図書館が想定している利用者の中心は、乳児から小学生までの子どもとその親です。また、国と地方の行政があげて少子化対策にとりくむ状況を反映しているのでしょうか、館内の一角に「子育て支援コーナー」を設けたり、そのためのサービスを謳う子ども図書館が少なくありません。次のような例があります。(以下、「」内は、すべて当該図書館のウェブサイトからの引用です。)

石岡市立図書館の「こども図書館本の森」(茨城県) = 中央図書館と同じ住所にあるこの図書館は2017年4月1日のオープン。ここには「子育て応援コーナー」があって、「妊娠・出産・育児など子育てに関する大人向けの本を中央図書館からヨリぬきで持ってきています。」中央図書館にも絵本や児童書のコーナーがあります。

練馬区立南大泉図書館の分室である「こどもと本のひろば」(東京都) = 「乳幼児から小学校低学年までの子供たちとその保護者を対象とし、乳幼児や児童向けの図書、育児や料理などの図書を充実させるとともに、安心して読書や事業を楽しめる空間づくりを大切にしています。」

横浜市南区の「はぐはぐの樹子ども図書館」(神奈川県) = この図書館は、同区の地域子育て支援拠点である「はぐはぐの樹」にあり、絵本に関する相談も受けつけ、「子育てを側面からサポートする」としています。

富山市立図書館の「とやまこどもプラザ」 = これは、「こども図書館と子育て支援施設が一体となった施設です。親子で本を楽しんだり、子育てに関する相談や保護者同士が交流・情報交換などをしたりできる場となっています。」ここにはゲームコーナーもあります。

宗像市民図書館の「えほんのへや」という分室(福岡県) = 「0歳から6歳くらいまでの子ども向けの絵本を中心に、育児に関する大人用の本や雑誌も揃えています。週3日、読書相談員が、乳幼児の読書に関する質問や相談を受け付けています。」

 

珍しい資料

 子ども図書館の資料は、一般に絵本と児童書、紙芝居、CDやDVDが中心で、子どもを連れて行く親のための育児関係図書がそれにつづきます。

 資料面で特徴がある図書館のひとつが、板橋区(東京都)の「いたばしボローニャ子ども絵本館」で、ここは「北イタリアのボローニャから寄贈された世界約85か国、2万5千冊の絵本を所蔵している海外絵本の図書館です。小学校だった建物の一部を利用した木の温もりが感じられる懐かしい雰囲気の中で、世界各国の絵本をゆっくりとお楽しみいただけます。」

 そのほか、渋谷区立笹塚こども図書館(東京都)にも外国語の児童図書があります。

 広島市の「5‐Day’s こども図書館」(旧:広島市こども図書館)には、児童図書館設立のきっかけとなったハワード・ベル博士から贈られた「ベル・コレクション」という洋書約1,000冊があります。

 

 漫画を好むのは子どもだけではありませんが、漫画に特化した図書館もあります。無料で閲覧できる例を挙げますと、

広島市まんが図書館 = 蔵書15万冊以上(ほかに同館の「あさ閲覧室」に5.7万冊)

 貸出は10冊まで、2週間以内。

北九州市漫画ミュージアム(福岡県) = ミュージアム(博物館)の図書館部分で漫画の単行本約5万冊を読むことができ、そこには「漫画に関する問い合わせに応えるソムリエカウンターもあります。」

③湯前(ゆのまえ)まんが図書館(熊本県湯前町) = 規模が110㎡と小さいため、熊本市古書店から借りうける資料を適当に入れ替えながら約6,000冊を展示し、閲覧に供しています。

 

珍しい施設

剣淵町絵本の館(けんぶちまち・北海道) = 絵本(36,000冊)だけでなく、大人が読む一般書(閲覧室に28,500冊)もあり、靴をぬいで入館します。楕円形の館内には次のようなスペースが用意されています。

 「絵本のへや」には、ままごと遊びの「ごっこはうす」や「木のパズル」もあります。

 「たまごのへや」というたまご型の部屋には、「木の玉約10万個が入った「木の砂場」があります。大人も子どもも一緒に入って楽しめる大きさです。

 また、「中高校生や多くの大人の方々向けの一般書閲覧室と読書室を設けています。

 体験教室は、絵本の読み聞かせやおはなし会、工作教室、料理教室などの絵本体験や地域の文化学習活動に利用する多目的の部屋で、団体活動への利用貸出もします。」

 喫茶「らくがき」では、「剣淵町産野菜を使った軽食やジュースがお勧めです。 絵本や西原の里の芸術作品、地場産品の販売コーナーがあります。」

横須賀市児童図書館(神奈川県) = 中学生までを対象としているため、2階に閲覧室、読書室のほかに学習室も備えています。

一宮市立図書館の子ども文化広場図書館(愛知県) = 3階建ての本格的なもので、幼児からティーンズまでを主な対象としており、調べ学習室があります。同市には小規模な尾西児童図書館もあります。

尾道市立図書館のみつぎ子ども図書館(広島県) = コンピューターコーナー、ビデオ鑑賞コーナーのほか、未就学児が木のおもちゃなどで遊べるプレイルーム、授乳室があります。同市には向島子ども図書館もあります。

北九州市立子ども図書館(福岡県) = 2018年12月末に開館したこの図書館は18歳以下の子どもを対象にしています。地下1階、地上2階の3階建てで広さは2000㎡。

 地下1階には幼児閲覧室、おはなしコーナー、寝ころびスペース、メディアコーナー、子どもひろばなどがあり、1階には小・中・高生閲覧室、調べ学習コーナー、メディアコーナー、リフレッシュコーナーなどがあります。2階は大研修室、学習室、児童図書研究室などで構成されています。

 ついでにご紹介しますと、北九州市には「こどもと母のとしょかん」と名づけられた子ども図書館が5館あります。それらは市民センター、社会福祉センター、市役所の出張所などに併設されたものです。

武雄市こども図書館(佐賀県) = 2階建ての2階にフードコートやカフェテラスがあり、1階がおもな利用スペースになっています。そこには「知育玩具を使った遊びのイベントやものづくりワークショップを定期的に開催」するプレイ&ワークスペース、「お父さんもお母さんも靴を脱いでほっとできるような休憩室」である赤ちゃん休憩室、授乳室、ボランティアの仕事スペースである「おはなしラボ」、おはなし会をする「ひみつの部屋」など、盛りだくさんなスペースが準備されています。

 

珍しい立地

流山市(千葉県)の市立「おおたかの森こども図書館」 = おおたかの森小・中学校敷地内に併設されたこの図書館は流山市と隣接する4市の「だれもが利用できる施設」で、絵本や中学生までを対象とした児童書、子育て関連図書を約7,200冊所蔵(2015年4月1日現在)しています。」

江東区(東京都)の区立「白河こどもとしょかん」 = 1974年に設立されたこの図書館は、2010年に元加賀小学校の校舎1階に移転して開館しました。2017年3月末現在の蔵書は約3万冊、閲覧席は16席。赤ちゃんコーナー、おはなしの部屋、絵本コーナー、書庫、事務室などがあります。

高槻市立中央図書館(大阪府)の「ミューズ子ども分室」 = 関西大学高槻ミューズキャンパス内にあって、子ども向けの絵本や児童書を約2万冊そろえていて、月曜から土曜の10時から17時まで開館。そのほか関西大学の休校日には休館します。

 

その他の珍しい例

 北本市立こども図書館(埼玉県)には「赤ちゃんから小学校低学年向けの本を中心に、3万冊を超える蔵書があります。小学校高学年向きの読みものもあります。子育て支援の本や雑誌も所蔵しています。」

 そのウェブサイトの「これよんで」という項目には次のように書かれています。「フロアーにて、職員がいつでも絵本の読みきかせなどをいたします。「これよんで」のバッヂをつけた職員にお気軽にお声をおかけください。」

 いつでも読み聞かせの要望に応じてくれるのは、珍しいですね。

 

 広島市の「5‐Day’s こども図書館」 = 2017年8月末日までは、広島市こども図書館という呼称でした。蔵書は約19万冊。先に触れましたように、この図書館は1949年に「アメリカ合衆国からハワード・ベル博士を通じ、絵本等1,500冊受贈」したのが設立のきっかけでした。

 その後、1950年には、ロサンゼルス市南加広島県人会から児童図書館建設費(400万円)を受贈し、1953年には、広島青年会議所から館内設備(102万円)を受贈するなど、多くの人から支援をうけて発展してきました。設立の発端が珍しい例です。

 

 三原市広島県)の「ほんごう子ども図書館」は、そのウェブサイトによりますと、「全国でも珍しい、公設民営の子ども図書館です。三原市より建物をお借りして、ボランティアで運営をしています。」

 

 高知市の「高知こども図書館」は、そのウェブサイトによりますと、「全国で初めての特定非営利活動法人NPO法人)が運営する、子どもの本専門の図書館として1999年に開館しました。赤ちゃん絵本から中学生高校生の読み物、児童文学に関する様々な研究書などの貸し出しを基本としながら、読書案内、読み聞かせ、ブックトーク、情報の収集と発信、その他NPOならではの多彩な企画を、職員とボランティアと理事たちで行っています。」

 この図書館は、「施設は高知県から無償貸与されていますが、資金援助は受けていません。人件費、図書購入費、その他の運営に関わるすべての経費は、趣旨に賛同してくださる会員の会費と寄付金、事業のための助成金、及び自主事業収入で支えられています。」

 開館時間は午前10時から午後6時まで。貸出は5冊まで。建物は2階建てで、誰でも無料で利用できるとのことです。

 

大学(図書館)が設置・運営している子ども図書館

 地方自治体のほかに、国、大学、公益財団法人、一般社団法人、NPO、企業、個人などが子ども図書館を開設・運営しています。蛇足ですが、以下に大学が運営して地域の子どもや保護者に開放している子ども図書館をご紹介します。

北海道武蔵女子短期大学図書館(札幌市北区)の児童図書室 = 1976年に開室。毎週金曜日の午後に開室し、大人も利用できます。

②埼玉東萌短期大学附属図書館(埼玉県)の「こども図書館コーナー」 = 「長く読み継がれている本を中心に約5000冊の絵本と紙芝居、読み物などがあります。コーナー内は靴を脱いで上がるので、好きな場所に座って本を読むことができます。学生や職員が読み聞かせをすることもあります。」

日本社会事業大学附属図書館1階(東京都清瀬市)の子ども福祉図書館 = 「幼い頃から社会福祉に興味を持ってもらうことを目的に平成16(2004)年に開設しました。保護者の方向けの図書も用意しておりますので、ぜひご利用ください。」

山梨大学附属図書館(山梨県)の「子ども図書室」 = 「学内外、年齢問わず、どなたでも利用でき」、イベントも開催しています。

東海学院大学附属図書館(岐阜県各務原市)の「東海えほんの森」 =「地域の乳幼児や保護者、近隣幼稚園や保育所(園)の園児に「絵本に親しむ場」「交流の場」を提供しています。」

 また、「絵本、大型絵本、紙芝居など約1,800冊が並んでおり、保育の授業での使用や、ボランティアとしての絵本の読み聞かせなど、学生の「保育実践の場」としても運用されています。」

京都造形芸術大学京都市)の「ピッコリー」 = この子ども図書館は絵本や児童文学関係書約17,000冊を所蔵していて、開館は木曜日から日曜日まで。おもちゃで遊べるほか、工作をする場所も設けてあります。

奈良教育大学図書館(奈良県奈良市)内の「えほんのひろば」 = 「本学で保育者・教師をめざす学生が、絵本を通じて教育実践力を高めることを目的として、設置されました。古典的な絵本から最新の絵本まで、独自の視点で厳選された約3,000冊の絵本があります。2014年春に改装した室内は、カーペット敷で、リラックスして絵本を見たり、友達とワイワイ読みあったり、絵本のいろいろな楽しみ方ができます。

※えほんのひろばは図書館内の一施設として、学外の方でもご利用いただくことができます。

※えほんのひろばには授乳室・多目的トイレが隣接しているため、小さなお子さま連れの方でも安心してご利用いただけます。」

鳴門教育大学附属図書館(徳島県)の児童図書室 = 1987年に設立されたこの図書室は地域に開放され、学生やボランティアがストーリーテリング、読み聞かせ、人形劇などをしています。最近は授乳室もできました。蔵書約17,000冊は、絵本、児童図書、紙芝居など。通常期は水曜・土曜・日曜・祝日に開室。時間は午後1時から4時まで。大学の休業期は水曜日だけ開室。貸出は8冊まで3週間です。