図書館ごくらく日記

図書館に関するいくつかのトピックス

学校と学校図書館の支援

 公立図書館については貸出サービスがクローズアップされがちですが、自治体内の学校(図書館)との連携や支援も、多くの公立図書館が行っている重要なサービスのひとつとなっています。そのばあい、対象となっているのは小学校と中学校が中心です。

 専任の職員や司書がいない学校図書館が少なくなかったため、以前から公立図書館が手を差し伸べる例はありましたが、連携・支援の勢いを加速させた全国的な出来事は次の4つです。

 

 ①学校図書館司書教諭の必置化

 1997年に改正された学校図書館法は、2003年4月1日以降、12学級以上の学校に学校図書館司書教諭を必ず置かなければならないと定めました。それに伴い、全国の司書教諭の発令状況は小中高校ともに100%近くになっています。(文部科学省による平成28年度「学校図書館の現状に関する調査」)

 ②「子どもの読書活動の推進に関する法律」の公布

 2001年12月12日に公布・施行された「子どもの読書活動の推進に関する法律」は、国と地方自治体が子どもの読書活動を推進するために総合的・計画的に施策をうちだし、「学校、図書館その他の関係機関及び民間団体との連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする」と定めています。

 ③学校図書館支援センターの試行

 文部科学省は、2006年度から年間およそ2億円の予算によって学校図書館支援センターのテストを始めました。センターには支援スタッフを配置して、学校図書館を支援するという目論見で、このテストは2006年度に36地域で行われ、2009年度までつづきました。 これを受けて全国各地にできた学校図書館支援センターは、公立図書館内に置かれるばあいと教育委員会の図書館以外の部署に置かれるばあいとがあります。

 ④「学校図書館法の一部を改正する法律」の公布

 2014年6月27日、学校図書館法が改正・公布されました。この改正は、学校での読書活動や調べ学習などを充実させるためには、学校図書館に学校司書を置くことを努力義務と定めたものです。

 

よくある連携と支援の例

(1)団体貸出

調べ学習用、朝の読書活動用の本を学校(図書館)に貸し出している公立図書館がたくさんあります。ただし、公立図書館の団体貸出は、多くの自治体で学校以外のさまざまな団体(住民の読書会、福祉施設、病院など)をも対象としています。

貸出には学校への配本が伴います。横芝光町立図書館(千葉県)、東大和市立図書館(東京都)、白山市松任図書館(学校間の相互貸借分を含む)、吹田市立図書館(大阪府)などのウェブサイトにはその旨が記載されています。

(2)職場体験学習

 公立図書館は、自治体内の中学生を中心に、図書館の簡単な仕事を体験する小学生から高校生までを受け入れています。ほかに、職場インタビューを受け付けたり、仕事ガイドをする図書館もあります。静岡県浜松市立図書館は、職場体験の生徒を全22館で各2名から6名、受け入れています。

 蛇足ですが、大学・短期大学の司書課程の学生を実習生として受け入れている公立図書館もたくさんあります。児童・生徒の職場体験が1日~数日なのに対して、大学生の図書館実習は期間が長くなっています。

(3)出張事業

「出前」「おでかけ」などとも言われる出張サービスには、おはなし会・ブックトークストーリーテリングや図書館の紹介などがあり、多くの公立図書館が学校に職員を派遣しています。

(4)図書館見学の受入れ

 これはクラス単位で公立図書館の見学を受け入れるもので、「校外学習」とか「図書館訪問」と呼ばれる例もあります。

(5)学校図書館へのアドバイス

多くの公立図書館が学校図書館からの相談に対応し、情報の交換と提供、アドバイスなどを行っています。定期的に学校へ出向くばあいや複数の学校と情報交換の場を設けるばあいなどがあります。さほど多くはありませんが、学校の教職員やボランティアのために公立図書館が研修を実施する例(読み聞かせ講座、本の補修法の指導など)もあります。

(6)読書活動の支援

 多くの学校で朝の読書活動や夏休みに課題図書を読む活動が行なわれるようになっており、それらを支援する公立図書館がかなりあります。支援の内容は、図書のセット貸出(貸出文庫)、読書の動機づけ指導、読書指導員の配置などです。

(7)公立図書館での調べ学習

 学校によっては、クラス単位で公立図書館へ行き、そこで生徒が調べ学習をするばあいがあります。

 

珍しい連携と支援の例

①蔵書の横断検索

 公立図書館と学校図書館の目録を同時に検索できるようにしている例は、次の自治体で見られます。(20181118確認)

 有田川(ありだがわ)町(和歌山県)=町立と小中学校

 印南(いなみ)町(和歌山県)=公民館図書室と小中学校

 奥出雲町図書館(島根県)=町立の2図書室と小中学校

 北谷(ちゃたん)町(沖縄県)=町立と小中学校

 浦添(うらそえ)市(沖縄県)=市立と小中学校

学校図書館の図書購入のとりまとめ

神栖(かみす)市立中央図書館(茨城県)は、「学校図書館の図書購入のとりまとめについて、平成28年度から中央図書館へ移管しました。これにより,年に1回だった図書購入が年3~4回できるようになり,年度途中でのリクエストや買い替えに対応できるようになります。」(20170315)

③保護者やボランティア向けの支援・サービス

 学校の教職員向けサービスを意図的に行っている公立図書館は少なくありませんが、生徒の保護者や学校図書館のボランティア向けに支援やサービスを行っている公立図書館はまれだといってもよいでしょう。横浜市立図書館では、学校向けサービスの柱のひとつが「保護者・ボランティア向けサービス」となっています。(20170316)

また、東久留米市立図書館(東京都)では、学校図書館での活躍をめざすボランティアの研修を実施しています。(20170315)

④リンク集やウェブ・コンテンツの提供

 大阪府立図書館は「YA!YA!YA! べんりやん図書館」で「中学生・高校生向けに、図書館の使い方、おすすめの本、本を探す方法などを紹介しています。」「調べ方ガイドを使い、e-レファレンスを利用し、リンク集も使えます。」(20170317)

 大阪市立図書館の「市立図書館活用の手引き:市立小学校・中学校などの先生方へ 第7版」の第1章「ネットで図書館、便利です」は、ネットからの情報活用法を22ページにわたって紹介しています。(20170317)

 宮若市立図書館(福岡県)はインターネットを使った調べ学習に役立つ「キッズリンク集」を作ってウェブサイトで公開しています。(20170316)

 

連携・支援が充実していると思われる例

ウェブサイトの情報が具体的または豊富な連携・支援の例は次のとおりです。

①神栖(かみす)市立中央図書館内(茨城県)の学校図書館支援センター

横浜市立図書館(神奈川県)

白山市松任図書館(石川県)の学校図書館支援センター

大阪市立図書館(大阪府

⑤吹田(すいた)市立図書館(大阪府