図書館ごくらく日記

図書館に関するいくつかのトピックス

図書館利用カード

 公立図書館の利用カードも、いろいろな面でバラエティー豊かです。たとえば、カードの名称など統一する必要はないと思われるかもしれませんが、せめて2、3種類に集約されていれば、ネットやデータベースを検索するときに、今よりずっと時間の節約ができます。

 2016年~2017年の私の調査では、おおむね次の名称が使われていました。使用頻度の多い順に列挙します。断然多かったのは①と②です。

 ①(図書館)利用カード  ②(図書館)利用者カード

 ③(図書館)貸出カード  ④図書館カード

 ⑤利用券  ⑥図書利用券 ⑦図書館利用券

 ⑧図書カード  ⑨館外利用券  ⑩図書貸出カード

 ⑪貸出利用券  ⑫図書利用カード  ⑬資料利用券

 このほか、当該自治体以外の住民用カードには、次のような名称が使われているばあいがありました。

 ①広域利用(者)カード  ②共通利用(者)カード

 ③市外利用券  ④共通利用券

 

複数の自治体の図書館で使える共通カードの例

(1)北海道の北見地域における図書館の共通カード

  北見市佐呂間町津別町訓子府町、置戸町、遠軽町大空町

(2)北海道の西いぶり広域図書館(情報システム)の共通利用カード

  登別市室蘭市伊達市。2012年1月から。

(3)青森県内図書館共通利用券

 この利用券は、青森県内すべての市町村の図書館や公民館図書室等を利用できます。   住所を確認できるものを提示すれば、居住・通勤・通学する市町村の図書館・公民館等で作ってもらえます。(20160419青森県立図書館ウェブサイトの要旨)

 利用券の有効期間は3年間。資料の返却は借りた図書館へ。(20160419野辺地町立図書館)

(4)長野県のエコール(上田地域図書館情報ネットワーク)の共通利用者カード

 上田市東御市長和町青木村坂城町に在住・通勤・通学している人。長野大学附属図書館も参加。

(5)長野県のすわズラー(諏訪広域図書館ネットワーク)の利用カード

 岡谷市諏訪市諏訪市立風樹文庫、茅野市下諏訪町、富士見町、原村。

(6)長野県の南信州図書館ネットワークの貸出カード

 飯田市松川町・高森町・豊丘村

(7)東京都の多摩六都共通利用カード

 小平市清瀬市東久留米市西東京市東村山市。タイトルには「六都」とありますが、各市の図書館のウェブサイトにはこの5市しか出てきませんでした。

(8)岡山県高梁川流域7市3町公立図書館相互利用

 新見市高梁市総社市早島町倉敷市矢掛町井原市浅口市里庄町笠岡市の7市3町。この制度は2014年4月1日から始まりました。(20160802)

 総社市図書館や倉敷市立図書館では上記のために広域利用者カードを発行します。

(9)鹿児島県の大隅広域図書館ネットワークの図書利用カード

 鹿屋市・肝付町・大崎町・南大隅町公共図書館(室)(20160924)

(10)兵庫県の播磨圏域連携中枢都市圏(8市8町)の一部でのマイナンバーカード

 1市2町(姫路市、福崎町、神河町)の図書館でのマイナンバーカードの共通利用が実 現。(20170224JIJI.com)

 

マイナンバーカードを利用カードにしている図書館

 マイナンバーカードを利用カードとして使えるようにした最初の図書館は、姫路市立図書館(兵庫県)で、2016年11月27日からでした。その後、高岡市立図書館(富山県)、神河町図書室(兵庫県)などがつづきますが、急に増えだしたのは、2017年9月以降です。

 理由は、総務省が2017年9月25日から、図書館など複数の公共施設の利用者カードをマイナンバーカード1枚に統合できる「マイキープラットフォーム実証事業」の運用を始めたからです。

 これは、自治体の発行するさまざまな公共施設利用カードの利用者番号とマイナンバーカードのマイキー部分に作るIDとを結びつけて、マイナンバーカードでさまざまな公共サービスを受けられるようにするシステムです。

 今のところ、マイナンバーカードの普及率自体が10.7%と低い(2018年3月1日現在、総務省)上に、利用者にとって従来のカードでも図書館の利用に支障がないため、マイナンバーカードが図書館カードとしてどれほど浸透していくかは見通せません。

 

リライトカード

 岩手県奥州市立図書館(岩手県)の利用カードは「利用券」と称し、「表面に「借りた資料のタイトルの一部、冊数、返却期限」を書き換えできるリライト式カードです。この種のカードを使っている図書館はほかに、芽室町図書館(北海道)、市立米沢図書館(山形県)、中野区立図書館(東京都)、小矢部(おやべ)市民図書館(富山県)、北名古屋市図書館(愛知県)、佐賀市立図書館など、かなりの数にのぼっています。

 

 リライトカードはいくつかの企業が製造販売していますが、図書館流通センター(TRC)のウェブサイトによりますと、リライトカードは「磁気情報による利用者認証と貸出内容印字が1枚のカードで可能」で、貸出レシートや貸出期限票が要らない一方、専用のリーダーライターが必要です。TRCによる普及状況は、2018年3月1日現在、「全国で244館(108自治体)の図書館で」採用されているそうです。

 

大学図書館でも使える公立図書館の利用カード

 花巻市立図書館(岩手県)の利用者カードをもっている人は、「富士大学附属図書館への入館と資料の閲覧」ができ、別に手続きをすれば貸出をうけることもできます。(20160421花巻市立図書館)両者は「相互友好協力協定」を結んでいます。

 千葉県の流山市江戸川大学との協力協定により、高校生以上の流山市民は江戸川大学総合情報図書館を利用することができます。希望者は市の図書館で手続きをし、市の「利用者カードに江戸川大学入館許可証シールを貼付」してもらいます。大学では貸出をも受けられます。

 また、同市は東洋学園大学とも類似の協定を締結し、市の高校生以上の市民は同大学の図書を借りることができます。こちらでは、市の利用カードに確認証を張ってもらう方法です。(20161002)

 都留市立図書館(山梨県)の利用カードを持っている人は、「都留文科大学附属図書館の資料を借りることができます。」(20170111)

 「金沢市{石川県}に在住・在勤・在学される方は、金沢市図書館カードで金沢大学附属図書館、金沢美術工芸大学附属図書館、金沢星稜大学図書館を直接利用することができます。」(金沢市図書館のウェブサイト)

 北名古屋市内の住民で市図書館の図書利用券を持っている人は、名古屋芸術大学図書館を利用することができます。ただし、大学図書館が指定する「利用登録申請書」を提出する必要があるとのことです。(20160726)

 

同じ自治体内の学校図書館でも使える公立図書館の利用カード

 藤岡市立図書館(群馬県)の利用カードは、「市内小中学校の図書室と共通に使用」できます。(20160509)

 南箕輪村図書館(長野県)の利用カードは南部小学校図書館と共通のカードとなっています。(20170308)

 

その他の珍しいカード

 高知県立図書館と高知市民図書館の利用カードは「共通利用カード」となっており、それを持っている人は両方の図書館で貸出を受けることができます。(20160708県立図書館)

 この両図書館はオーテピア高知図書館として一体型図書館をめざしており、「高知県立図書館と高知市立市民図書館本館との共同運営による図書館です。オーテピア4階に共同の事務室が置かれ」、2018年7月24日に開館する予定となっています。

 熊本市立図書館では、市立の小中学校が発行する図書利用カードを使うことができます。(20160829)

 

参考:1枚の利用カードで全国の図書館から本を借りられる国

 以下の情報源は、ノルウェーを除いて、国立国会図書館のカレントアウェアネスです。

 

 「ノルウェー国内では、二〇〇五年一〇月から、一枚の貸出カードで全国の図書館どこからでも本が借りられるシステムを導入」しました。

 「二〇一一年現在、公共図書館と大学など高等教育施設の図書館で共通貸出制度に加入している所は約七〇〇館で、全体の約七五パーセントを占めている。そして、登録者数は七五万五〇〇〇人に上っている。積極的に参加しているのは自館のかぎられた資料を補おうとする公共図書館で、所属学生や研究者へのサービスを優先する大学の付属図書館は、どちらかと言えば消極的と言える。」(マグヌスセン矢部直美・吉田右子・和気尚美『文化を育むノルウェーの図書館』新評論、2013年)

 

 イギリスでは、「イングランドウェールズ北アイルランドの4000以上の公共図書館において、そのいずれかの図書館の利用カードを持っていれば他の図書館も利用可能になったとのことです。」(2009/9/28付けguardian.co.ukの記事の紹介)

 また、ウェールズスコットランドでは独自にこの試みを進めているようです。

 

 韓国では、2010年から、文化体育観光部と国立中央図書館(NLK)、地方自治体が連携し、1枚の利用者カードで全国の多くの図書館の貸出サービスを利用できるようにするプロジェクトが進められてきました。

 これは、利用者カードを統合することによって利用者の利便性の向上や予算削減を目指しているとのことです。2018年3月現在、このサービスには全国の1,000館が参加しているそうです。